有馬温泉直下の地下深部洪水が阪神淡路大震災を引き起こした可能性を発見
過去半世紀以上にわたる有馬温泉水の水素?酸素安定同位体比および塩素イオンのデータから、その直下で沈み込むフィリピン海プレート由来の水が1994年頃に地下深部で洪水のようにあふれ出し、それが1995年の兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)の引き金となった可能性が高いことを見いだしました。
温泉水の中には、天水のほかに海底の岩石などに由来する水が含まれるものがあり、それらは水分子を構成する酸素と水素の同位体組成から検出することができます。兵庫県神戸市の有馬温泉は、海水の2倍以上の塩分を含むなど特異な泉質を示し、その原因は、地下60km以上に沈み込んだフィリピン海プレート由来の水が混入しているためと考えられていますが、直接的な証拠は得られていませんでした。
本研究ではまず、数値モデルで計算した有馬温泉直下のプレート内の水の同位体比が、実際の有馬温泉水に含まれる非天水成分のそれと一致することを確かめました。また、1940年代からの深井戸掘削による温泉開発以降、プレート由来水の割合が指数関数的に減少した一方、1995年前後に一時的に急上昇していたことが分かりました。さらに、研究対象とした7泉源のうち3つでは、この現象が兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)以前に生じていました。地震の前兆現象として、地下水中の塩素イオンやラドンの濃度上昇が報告されており、有馬温泉でも同様の前兆が現れていたことになります。この時に発生したプレート由来水の量は10万立方メートル以上と見積もられ、地下深部で発生した洪水が断層強度を低下させ、兵庫県南部地震の引き金となった可能性を強く示唆しています。
類似する現象は松代群発地震(1965?67年)でも見られ、本研究グループは、松代温泉もまたフィリピン海プレート由来の水を多く含んでいることを明らかにしています。このような温泉水のモニタリングによって、地震の発生を事前に予測できると期待されます。
PDF資料
プレスリリース研究代表者
365体育投注生命環境系山中 勤 教授
掲載論文
- 【題名】
- Hot springs reflect the flooding of slab-derived water as a trigger of earthquakes.
(温泉は地震の引き金となるスラブ由来水の洪水を反映する) - 【掲載誌】
- Communications Earth & Environment
- 【DOI】
- 10.1038/s43247-024-01606-1
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