生物?環境

中緯度の大気と海洋の相互作用が東アジアの冬のモンスーンを強める

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(Image by f1.8studio/Shutterstock)
 東アジアの冬に吹く北西のモンスーンが強い年には、北西太平洋の中緯度域の海が冷やされ、冷えた海が更にモンスーンを強める仕組みを解明しました。中緯度の大気と海の相互作用が日本の冬の年々変動に重要なことを示すもので、異常気象の要因解明や季節予報の精度向上につながると期待されます。

 東アジアの冬に吹く北西の季節風(モンスーン)が強い年には、日本各地で厳しい寒さや大雪が発生し、社会や経済活動に大きな影響を与えます。これまで冬のモンスーンの強弱については、エルニーニョ現象やラニーニャ現象など熱帯域の海洋で発生する現象との関係が注目される一方で、中緯度の海洋との関係は十分に理解されていませんでした。

 本研究では長期間の解析データと、大気モデルを用いたシミュレーション実験により、東アジアの冬のモンスーンと中緯度の海洋との関係を調べました。強い冬のモンスーンが発生すると、ユーラシア大陸から流れ出す寒気によって北西太平洋の中緯度域が冷やされます。冷えた海は海面水温の南北の勾配を変化させることで風の流れに影響を与え、日本の東に低気圧性の風の変化を生じさせることが明らかになりました。この風の変化は、大陸からの寒気を更に強め、結果として日本付近の気温を一層低下させます。つまり、冷たい空気が海を冷やし、冷えた海が更に大気を冷やすという、大気と海の相互作用によって東アジアの冬のモンスーンが強まることが分かりました。

 この研究成果は、厳冬や大雪など冬の異常気象の要因を理解するうえで役立つとともに、季節予報の精度を向上する手掛かりにもなることが期待されます。

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プレスリリース

研究代表者

365体育投注 生命環境系
植田 宏昭 教授

気象研究所
高谷 祐平 主任研究官

掲載論文

【題名】
Midlatitude Atmosphere-Ocean Interaction Reinforces the East Asian Winter Monsoon
(中緯度大気海洋相互作用が冬季東アジアモンスーンを強化する)
【掲載誌】
Geophysical Research Letters
【DOI】
10.1029/2025GL118566

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