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小脳が「連合学習」を支える神経メカニズムを解明

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(Image by Kateryna Kon/Shutterstock)
 視覚情報と運動とを結びつけて覚える「連合学習」が行われる神経メカニズムとして、小脳の持続的な視覚応答が増強されることによって、行動の目的に関連した情報が増幅され、視覚刺激と行動の対応関係を区別しやすくしていることが分かりました。

 「車の運転中に赤信号を見たらブレーキを踏む」「スマートフォンの通知を見てアプリを開く」といった習慣的で円滑な行動は、特定の感覚刺激とそれに対応する運動を結びつけて覚える「連合学習」によって形成されています。近年、このような連合学習に小脳が関与している事が示唆されていますが、具体的な神経メカニズムは分かっていませんでした。

 そこで本研究では、ニホンザルに対して、2種類の画像に対してそれぞれ左右方向への眼球運動を対応させる連合学習課題を行わせ、その間にサルの小脳外側部(歯状核)における神経活動を記録したところ、画像に対して持続的な活動を示す神経細胞が多く見つかりました。これらの神経細胞は学習中に特に強い反応を示し、さらに左右方向と結びついた画像ごとに反応の強さが異なっており、この持続的な活動によって「学習中」と「特定の運動に結びついた画像」の2つの情報を同時に符号化していると考えられます。さらに、学習中の反応が強いほど、画像ごとの反応の差も大きくなっていました。これは、小脳の信号が学習状態に応じて視覚刺激の弁別を強化している、すなわち小脳は、学習中に視覚刺激と行動の対応関係をより明確に区別しやすくすることで、連合学習を促進していると考えられます。

 本研究成果は、小脳の信号が行動の目的に関連した情報を増幅するという新しい神経メカニズムを提案します。小脳は構造的に均一な神経回路を構成することから、このようなメカニズムによって、さまざまな認知機能が制御されている可能性が考えられます。

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プレスリリース

研究代表者

365体育投注 医学医療系
國松 淳 助教

掲載論文

【題名】
Sustained visual signals in the primate cerebellar dentate nucleus drive associative learning
(連合学習を促進する小脳歯状核における持続的な視覚信号)
【掲載誌】
Communications Biology
【DOI】
10.1038/s42003-025-09068-7

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