生物?環境

東南アジア熱帯林で重要なフタバガキ科の樹種の遺伝的特性を解明し、気候変動が進んだ将来は分布適地が拡大すると予測

研究イメージ画像
 東南アジア?ボルネオ島の主要な樹木でフタバガキ科のShorea macrophylla(和名?オオバサラノキ)の遺伝的地域性と将来の分布適地を調査したところ、ボルネオ島東北部の集団が起源的だと分かりました。また、気候変動の進展に伴いこの樹種の分布適地は拡大すると予測されました。

 フタバガキ科樹種でTengkwangと呼ばれ、その種子から上質な油脂が採取できる種があります。Tengkwang の仲間で、ボルネオ島の固有種であるShorea macrophyllaは種子が大きく高木になります。このため、種子からの油脂採取に加え、木材としても利用が可能で、植林も行われている重要な樹種となっています。

 本研究では、S. macrophyllaのボルネオ島のインドネシア領(カリマンタン)の天然林集団を対象に、2種類のDNAマーカー(一塩基多型(SNP)とマイクロサテライト(SSR))を用いてそれらの集団のゲノム全体を網羅的に解析し、遺伝的多様性と遺伝的地域性を調べました。その結果、どちらのDNAマーカーでも、ボルネオ島東北部、中部と南西部の集団が、それぞれ異なる遺伝的地域性を保有していることが分かりました。中でもボルネオ島東北部の集団は、集団内の遺伝的多様性も高く、S. macrophyllaの起源的な集団であると考えられました。

 このことから、S. macrophyllaの保全には、異なる遺伝的地域性を持つこれら3集団をそれぞれ別の管理単位として保全していくことが適切であると言えます。また、気候変動が進んだ2070年の分布適地を予測したところ、S. macrophyllaの分布適地が拡大することが分かりました。この結果からも、S. macrophyllaの植林では、三つの管理単位のそれぞれで苗木を生産し、それぞれの遺伝的な要素が混合しないような植林活動を行うことが推奨されます。

PDF資料

プレスリリース

研究代表者

365体育投注 生命環境系
津村 義彦 名誉教授

掲載論文

【題名】
Genetic diversity and population structure of Shorea macrophylla using genome-wide single nucleotide polymorphisms and microsatellite markers in Indonesia for conservation
(保全のためのゲノムワイド一塩基多型およびマイクロサテライトマーカーを用いたインドネシアのShorea macrophyllaの遺伝的多様性と集団構造)
【掲載誌】
Ecological Research
【DOI】
10.1111/1440-1703.70010

関連リンク

生命環境系