障がい者の包括的な社会参加を評価するWHOの指標の日本語版を開発
世界保健機関(WHO)は障がい者の包括的な社会参加を評価するための指標(CBR Indicators)を開発しています。医療?教育?生計?社会?エンパワーメントの5要素で構成される指標を英語から日本語に翻訳し、その信頼性と妥当性を確認した結果、日本の文脈でも使用できることを示しました。
世界保健機関(WHO)は、障がいのある人が地域の中で生活し社会に参加できる地域を開発するための実践的なアプローチとしてCommunity-Based Rehabilitation(CBR)を提唱してきました。CBRは「保健?教育?生計?社会?エンパワーメント」の5領域からなります。これまでに100カ国以上で実践され、地域でのCBR活動の実施が、障がいのある人の権利や社会参加の機会へのアクセスを改善したことが報告されてきました。一方、多くの報告が定性的データに基づいていたため、WHOは2017年にCBRの定量的な指標となるCBR Indicators(CBR-Is)を開発しました。これには、CBRの各領域の構成要素に基づく40の指標を明らかにする設問が含まれており、地域でどのような支援や取り組みが必要かを整理するための指標となっています。
日本でも、障がい者の雇用機会の制限や社会参加の障壁は大きいことが報告されています。そこで本研究チームは、日本における個人やコミュニティの社会的包摂の構築に関する現状と課題を把握するためにも、WHOが開発したCBR-Isの日本語版を開発する必要があると考えました。具体的には、CBR-Isを英語から日本語に翻訳し、日本の文脈で使用できるかどうかなど、翻訳した指標の信頼性と妥当性を検証することを本研究の目的としました。
日本語版CBR-Isの開発についてWHOから正式に許可を得た後に、英語から日本語への翻訳作業を開始しました。翻訳は、専門家に協力を依頼し、国際的な翻訳プロセスに基づいて実施しました。その後、日本国内の障がいのある方とない方を対象にオンライン調査を実施しました。対象者には、ご自身の現状や経験をもとに、日本語版CBR-Isを含む各設問に回答してもらいました。分析の結果、日本語版CBR-Isの信頼性と妥当性が確認され、日本の文脈でも使用できることが示されました。
PDF資料
プレスリリース研究代表者
365体育投注医学医療系後藤 亮平 准教授
掲載論文
- 【題名】
-
Development and validation of the Japanese version of Community-Based Rehabilitation Indicators
(日本語版CBRインディケーターの開発と検証) - 【掲載誌】
- Disability and Rehabilitation
- 【DOI】
- 10.1080/09638288.2025.2588062
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